『星系出雲の兵站 1』は、何が書いてある本?
兵站に焦点を当てるミリタリーSFです。
人類の播種船により植民された五星系文明。辺境の壱岐星系で人類外の産物らしき無人衛星が発見された。非常事態に出雲星系を根拠地とするコンソーシアム艦隊は、参謀本部の水神魁吾、軍務局の火伏礼二両大佐の壱岐派遣を決定、内政介入を企図する。壱岐政府筆頭執政官のタオ迫水はそれに対抗し、主権確保に奔走する。双方の政治的・軍事的思惑が入り乱れるなか、衛星の正体が判明する――新ミリタリーSFシリーズ開幕。
謎の高度生命体とのファーストコンタクトからはじまる宇宙戦争SF。第一巻は、なかなか姿をあらわさない敵とのあいだで手探りの情報戦がくりひろげられる序盤。人類内の政治的駆け引きが進む中盤。そしてついに実体を見せた敵との実戦が切って落とされ――手に汗握る初戦の攻防の末、もたらされる驚愕の真実。といった内容で次巻へつづきます。
最初のうちは堅めの文体とキャラにとっつきにくさを感じるかもしれませんが、おそらくそれは序盤だけです。事態が進むにつれ、各キャラのとる行動と思惟そのものに強烈な個性を感じるようになっていきます。また、主要人物はみな頭のいい人ばかりなので、エリート軍人たちの群像を楽しむ小説としてストレスフリーに読めます。
どんな人にオススメ?
「英雄の誕生とは、兵站の失敗に過ぎない」
帯にも書かれているフレーズは最高に頭のキレる兵站監・火伏礼二大佐の台詞です。歴史や戦史に興味を持ってきた人なら〈兵站〉と聞いただけで心惹かれるところがあるのではないでしょうか。本書はタイトルにも銘打つほどズバリ〈兵站〉をクローズアップしてくる軍事SFなのです。上記の台詞がどんな論理で吐かれ、その意味が物語中でどのように効いてくるかはぜひ本書の中で確かめてみてもらいたいです!
yonderumonの注目ポイント!
どっこい、〈兵站〉がテーマだからといって、お堅い戦略や調整ばかりの物語ではありません。降下猟兵第七中隊の戦いぶりは正統派ミリタリーアクションでハラハラドキドキ盛り上がる盛り上がる! シャロン紫檀中隊長とマイア先任兵曹長の掛け合いのおもしろさ! っていうか美貌と天才的有能さの揃ったシャロン中隊長、かっこよすぎます!
毒舌秘書室長(実はスパイの元締め)坂上さんや、とりつくしまもないほどクールなブレンダ霧島主席分析官など魅力的なキャラたちに今後の魅力爆発の可能性を大いに感じますね。