『叛逆航路』は、何が書いてある本?
元戦艦AIの過去と復讐を描く物語です。
二千年にわたり宇宙戦艦のAIだったブレクは、自らの人格を四千人の人体に転写した生体兵器〈属躰〉を操り、諸惑星の侵略に携わってきた。だが最後の任務中、陰謀により艦も大切な人も失う。ただ一人の属躰となって生き延びたブレクは復讐を誓い、極寒の辺境惑星に降り立つ……デビュー長編にしてヒューゴー賞・ネビュラ賞・ローカス賞など『ニューロマンサー』を超える英米7冠、本格宇宙SFのニュー・スタンダード登場!
自分自身だった戦艦を失い、ただ一つの属躰となって復讐のために流浪する主人公ブレク。冒頭、主人公は一面の雪原で行き倒れていた旧知の人物を偶然拾います。それはかつて彼女の上官だったセイヴァーデン。すっかりエリートの面影をなくしたダメンズ・セイヴァーデンと、復讐のために旅をしているブレクの珍道中がそこから始まります……。
舞台となる帝国には性別の区別がなく、三人称は全て「彼女」です。これが読書体験としてなかなか新鮮です。帝国独特の習慣や制度などの設定を掴むまで少し混乱しますが、それだけ練り込まれた世界観ということでもあり、深い魅力を感じます。
どんな人にオススメ?
元は戦艦AIだったブレクが、いかにして復讐の執念を持つにいたったのか? 少しずつつまびらかになる過去。過去のブレクの在り方といまのブレクの在り方の違い。ブレクをそのように変えた、とある人物との過去の日々と事件。ダイナミックなギミックや時間軸、斬新な語り口のSF小説でありながら、間違いなくこの物語は切ない愛の物語です。
一見無機質な始まりに見えるかもしれませんが、頁が進むにつれ多彩なキャラクターの魅力に引っ張られて面白くなっていきますので、むしろキャラクター小説を読み慣れている人にこそジャンルを超えてオススメしたい作品です!
yonderumonの注目ポイント!
ブレクの旅の道づれセイヴァーデン。このキャラがイチオシです! 序盤どこまでもクズ・オブ・クズなんですけど、いつしかクズな子ほどかわいい感が出てきて目の離せないキャラクターとなっていきます。ブレクとの関係性の変化、発展がおもしろすぎます。セイヴァーデンの活躍と成長(?)にご期待ください!